本家より抜粋その8


えっとですね。この先がどうしても思いつかないんっすよ。正直言うと。
29日分を今日のヤツの後ろにつけて「完結してないけど完結!」と逃げたい気分です。
実際問題、アニメを見た時の衝撃で作ったプロットはここまでしかない。
今見ても「不思議の国のハルヒ」はゾクゾクするけど、初見の衝撃(初見の鏡夜・・・大爆笑)は無い。
だから、勢いとか創造性とか、そういうものは、あの頃より劣ってしまう。
それでも、私が一番書きたいところってその先なんだもんなぁ・・・くはーっ。




俺には藤岡ハルヒの涙を見守る権利があった。
或いは、俺には見守ることしかできなかった。



4.

一度だけ、帽子屋が来たことがあった。




彼はこちらに近付いてくるなり、にこやかに
「やあ」
と挨拶になっていない挨拶をした。

「・・・何かお買い求めで?」
「いいや、僕は今の僕を気に入っているから結構だよ」

帽子屋は後ろのプールに顔を向け、ただ、と付け加えた。
「少しだけこのプールを、ね」

水面は揺れなかった。
風が無い場所での穏やかな間は、時間が止まってしまったかのような感覚を引き出させた。





「綺麗なプールだ」





鐘の音が3度、鳴り響いた。










余韻が空に吸い込まれてから、ゆっくりと無音の世界が活動を始めた。




「羨ましい仕事だね」


皮肉ともとれるその言葉に思わず自嘲が漏れた。
「仕事?何処が。ただ見ているだけなら、よっぽどキノコ売りの方が仕事らしい」

すると帽子屋はこちらを向いて、笑った。





  誰かが見守ってくれると、人は安心するんだよ。





「そのやり甲斐の無い仕事、よければ僕に譲ってくれないか?」
くるっとプールを向き直してそう言ったかと思うと
またこちらを振り返り、なーんてね、とおどけた。





 さて、と。


「なぞなぞー!」
「・・・何だ、いきなり」
「君にこの仕事が与えられたのはなーぜ?」






「な・・・ぜも何も、この世界に理由なんて、」


さっきから、よく意味の分からない男だった。
ただの客なら話題にも出さないプールを気にかけ、
よく笑い、
しかもその答えの無いなぞなぞに、









「何故?」






何故?






『何故、俺が?』



『なあ、そう思うだろう!?』











な、ぜ?













目の前の男はにっこりと微笑み、胸ポケットから懐中時計を取り出した。
「おおっと、もう3時だ。これだとおやつの時間に遅れてしまうな」


それじゃ。
そう残して去っていく、何処かの誰かに酷似したその背中に、
小さく「いつも3時だ、馬鹿が」と投げつけた。