本家より抜粋その13


真に勝手ながら、「桜蘭高校ホスト部」という漫画を知らない方は閲覧禁止。
というか、アニメ版13話「不思議の国のハルヒ」を見てない方は閲覧禁止。
その原作のイメージ、特に鏡夜のイメージが崩れるのを恐れる方も閲覧禁止。
だだだって、他にコレ残しとくところなかったんだもん!!(駄々こね)
もうちょっとしたらちゃんと退けますんで、それまではすんませんです。




気付けばここにいた。それだけだ。

気がつけば俺は生きてここに立っていたし、この世界の言葉も喋ることができた。
誰かに育てられた覚えはないし、一人で苦労して生き抜いたというような記憶もない。

もしあの時点がこの世界の俺の始まりなら、俺は自分の人生の全てを覚えている。
もしそうでないのなら、忘れてしまったのだろう。


それだけだ。
今の俺には、関係ない。



1.

 あの時点を俺の始まりとするなら、俺は始めから自分の仕事を知っていた。
 商品であるキノコの性能もよく知っていたし、この世界での勘定も難なくこなした。

 金銭管理をするのは相変わらず好きだったが、金がなくても生きていけた。
 この世界には夜がないし、したがって対となる昼も存在しなかったからだ。
 朝も、昼も、夜も、食事も、睡眠も、
 『午後3時』以外の時間概念は何もなかった。












眠りから目が覚めて、それでも頭に響く鈍痛がまた俺を引きずり込もうとする。
ゆっくりとこめかみを押さえながらベッドから起き上がると、見慣れた寝室があった。


ベッドの横にある時計を見遣る。

7時を過ぎたところだった。




教室のドアを開けると、珍しくそこには環がいた。

「おおっ、おはよう鏡夜!」
「おはよう」

静かに席に着くと、予想通り、環は俺の前の席まで歩いてきて、椅子に腰掛けた。


「今日はいつもより早いな」
仕方なく目の前の男に話を促してみれば、
「そうだろうそうだろう!これにはうーんと深い事情があってだな・・・」
ちぎれんばかりに尻尾を振った子犬が勝手に喋り倒してくれる。

合いの手を適当に入れながら、相手のよく動く顔をぼんやり見つめた。




何故、俺が?



そうだ。
あんなおとぎ話のような夢など、環が見てくれた方がよっぽど似合う。
あの夢を見た翌日には、今のように俺の前でにこにこしながら話すのだろう。
夢の続きまで見てしまった日には?想像するだけでも面白い。




何故、俺が?



「なあ、そう思うだろう!?」
「ん・・・ああ、そうだな」


目の前の純真な顔が眩しくて、窓の外へと視界をずらした。
今日は晴れるらしい。